日本の妖怪・幽霊

呪行李(のろいごうり)

日本の民間伝承や怪談の一つで、呪いや怨念が込められた「行李(ごうり)」にまつわる怖い話です。行李とは、竹や木の皮で編んだ箱型の収納具で、昔は衣類や大切な物を入れるために使われていました。「呪行李」は、持ち主の怨念や負のエネルギーが強く宿ってしまい、他の人に不幸をもたらす存在として恐れられています。

呪行李の特徴と伝承

持ち主の怨念が込められる

呪行李は、元の持ち主が強い怨念や未練を抱いて亡くなった場合、その思いが行李に宿り、「呪い」を持つ存在となるとされています。持ち主の強い執念が行李に染み込み、手にした人に不幸をもたらすという怖い話です。

他人に災いをもたらす

呪行李を手に入れた人や、不用意に中身を見た人には、さまざまな不幸が訪れるとされています。たとえば、病気になったり、事故に遭ったり、家族に不幸が降りかかるなど、災厄が続くと言われます。このように、呪行李は持ち主に悪影響を及ぼす存在として怖れられ、誰も持ちたがらない忌まわしい物とされています。

処分が難しい

呪行李はただ捨てたり燃やしたりしても、呪いが解けないと言われます。捨てようとしても家に戻ってきたり、手放すとさらに強い呪いがかかると信じられているため、寺社で供養をしてもらうなどの方法が取られることがあります。

呪行李にまつわる怖い話

1. 旅館の呪行李

ある旅館の若い従業員が、物置を整理していると古い行李を見つけました。その行李は埃をかぶり、誰も触れていない様子で、蓋には鍵がかけられていました。興味を持った従業員が、誰にも相談せずに鍵をこじ開け、中身を確認すると、そこには古びた子供の服や小さな人形、数枚の写真が入っていました。写真には、若い母親らしき女性と赤ん坊の姿が写っていたものの、その女性の顔が消えてしまっているかのように曖昧で、はっきりと確認できませんでした。

その夜から、旅館の従業員たちの間で不気味な出来事が頻発するようになりました。夜中になると、誰もいないはずの廊下で子供の泣き声が聞こえたり、女性のすすり泣きが耳元で響いたりと、従業員たちは怖がり、仕事に集中できなくなりました。特に、行李を開けた若い従業員は、夜になると「おかあさん…」という小さな声が耳元で繰り返し聞こえ、体調を崩してしまいました。

旅館の主人は最終的に霊媒師を呼び、行李をお祓いしてもらいましたが、その際に霊媒師は「この行李には母と子の無念がこもっている。この行李は決して開けてはならなかった」と告げたといいます。行李は供養されて埋葬されましたが、その従業員は旅館を去り、行方不明になったという話です。

2. 遺品整理で見つかった行李

ある家族が、亡くなった祖父の遺品を整理している際に、奥の方に隠されるようにして置かれていた古い行李を見つけました。行李は祖父の手で何度も補修されており、中には古い和服や日記帳が収められていました。日記には、祖父が昔、愛した人を亡くした悲しみや、祖父がその後ずっとその女性への未練や愛情を抱き続けていたことが書かれていました。

その夜、家族の誰もが不気味な夢を見るようになり、特に行李を開けた家族の息子は、夢の中で知らない女性が無言でじっと自分を見つめてくるという悪夢に悩まされました。女性の顔ははっきり見えないものの、無表情でじっと見つめてくる姿が強烈に残り、目が覚めてもその姿が脳裏に焼き付いていました。

家族はこの怪異に恐怖を感じ、霊媒師に相談しました。霊媒師は行李に手をかざすと、「この行李には強い思念が宿っており、手放したくないという気持ちが非常に強い」と伝え、すぐに供養を勧めました。しかし、行李を手放した後も息子の夢には女性の姿が現れ続け、行李が引き取られてからも「一度開けてしまった者には、その想いが残り続ける」という警告が忘れられなかったといいます。

3. 古道具屋で手に入れた行李

ある骨董好きの女性が、アンティークショップで古い行李を見つけ、興味本位で購入しました。行李は昔の家紋が刻まれており、歴史を感じさせる美しいデザインに彼女は魅了されました。家に帰り、行李の中を確認すると、古いお守りや手紙、切れた数珠が入っていました。手紙には、明治時代の悲恋について綴られており、女性はその浪漫さに興味を持ちつつも、どこか不吉な感じも覚えました。

その夜、彼女の部屋の中で足音や物音が響くようになり、明らかに自分しかいないはずの部屋で誰かが動いている気配がしました。さらに、鏡を見ると一瞬、彼女の後ろに着物を着た人影が立っているのを目撃し、恐怖で凍りつきました。

行李が原因だと確信した彼女は、翌日急いで行李を処分しようとしましたが、アンティークショップも廃棄業者も受け入れてくれませんでした。困り果てた彼女は神社に行き、供養を頼んだところ、神主から「その行李には手を出してはならないものが入っている」と忠告され、封じられた行李は最終的に寺院で厳重に封印されることになりました。その後も彼女は数カ月にわたり、人影がちらつく悪夢に悩まされたといいます。

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